管理栄養士の小原水月です。
16時間断食や1日1食や2食の食事法、空腹感を優先する食事の仕方など、いかに「食べないか」に焦点を当てた食事が注目を集めているようです。
その背景には食べることを否定的にとらえる人の心理があるように感じています。
でも、食べるって生きるうえで必要な行いですし、幸せになれるじゃないですか。
「なぜ食べるか」を改めて考えると、もっと食事と気楽に向き合えるのではないかと思います。
食べる理由は栄養的な観点からみると2つあります。
1つは栄養素の補給。
もう1つは体の機能維持。
人は自らエネルギーや体の構成物質を生み出せません。
外部から食べ物として栄養源を摂り入れ、体を維持し、暮らしを営んでいます。
そして、人の住んでいない家があっという間に荒んでしまうように、体の機能は使わないと使えなくなります。
定期的に食事をすることは消化器を中心に体のさまざまな器官を使う行いでもあるのです。
それは、自律神経のバランスや体内時計にも影響が及ぶため、心と体の全ての状態をも左右することになります。
つまり、食べないということは、ゆるやかに死に向かう行為。
全身の機能がゆっくりと低下していったり、反動でドカ食いをしたりするリスクを高めることでもあるのです。
食事の時間になってもおなかが空かない、食欲がないのは胃腸の動きが鈍くなっている可能性があります。
体に不都合がなければ、食後4時間程度で胃の中は空っぽになります。
おなかがグーとなるのは胃が強く収縮して、残りかすを腸へ送り出すときの音です。
前の食事から5時間以上たっていても空腹感がない、食べたくないようなら胃に注目して暮らしを振り返ってみましょう。
胃の動きを鈍らせる要因は以下の通りです。
高たんぱく質・高脂質な食事
唐辛子などの刺激物
アルコール
カフェイン
ストレス
睡眠不足
負荷の高い運動
時間が不規則な食習慣
これらの影響は頻度や他の体の状態にも左右されますが、心当たりがある場合は改善すると胃の健やかさを取り戻せます。
胃の負担になる要因を取り除いたら、次に積極的に胃が活発になることを取り入れられると、心と体の元氣度を高められます。
そこでおすすめしたいのが、お米生活です。
普段の日は、たんぱく質と脂質を控えめにしてお米中心の献立にする。
そして、いただきますと言葉に出して食べ始め、ゆっくりよく噛んで、味わう。
箸をおき、ごちそうさまと、言葉にした時には、心地よい充足感が味わえ、胃も滞りなく働いています。
1日3回定期的に食事をすることで、胃の機能の回復、トレーニング、維持になります。
ただし、調子が悪いときに無理をしたり、頑張ったりして食べる必要はありません。
体調や暮らしに合わせて量や内容を調整してみてください。
「おなかが空いた」という感覚を忘れている、1日1食や2食だったから3食食べるのが心配、という人はご相談ください。
今のあなたにぴったりの暮らしや食のスタイルをお探しします。
一緒に時間にも気持ちにも余裕のある暮らしを食から作りましょう。
かつて私はカロリー計算重視で食事をしていました。
当時は体の状態なんて考えもせず、定期的にバランスよく栄養補給さえしていれば、健康でいられると考えていましたし、困ることは何もありませんでした。
しかし、体調に合わせた食事をするようなると、食後の充足感が高まり、何をするにもスムーズに動けるようになったのです。
不調のさなかにいると不調にさえ気づけなくなるのですよね。
食事をきっかけに暮らしの幸福度が底上げされたのを感じています。