管理栄養士の小原水月です。
私がおすすめするお米生活の基本は一汁一菜。
一汁一菜ではものたりない、つまらないと思いますか?
たしかに、一汁三菜などおかずが多い食事に比べると見た目がさみしく感じるかもしれません。
けれど、毎日心がおどるような食事が必要なのでしょうか。
この記事では、食のハレとケの考え方と一汁一菜を楽しむコツをお伝えします。
そもそもハレとケとは、日本を代表する民俗学者・柳田國男によって唱えられた考え方です。
日本人の生活リズムを表現した言葉で、漢字ではハレには「晴」、ケには「褻」の字が当てられます。
「ハレ」とは、正月やお盆といった年中行事、お宮参りや七五三といった人生儀礼など、非日常的な行事が行われる時間や空間をさします。
非日常であるハレの日は、単調になりがちな生活に変化とケジメをつける日。
普段とは違う衣服を身につけたたり、部屋を飾り付けたり、食事も高価で特別なものを並べたりしました。
そしてハレ以外の日常生活、つまり普段の仕事や休息の時間や空間が「ケ」です。
柳田國男はこの2つの違いを明確にし、ハレとケとの循環リズムから日本の生活文化が分析できると唱えました。
ポイントは「循環」という言葉。
どちらか片方ではなく、どちらも欠かせない要因なのです。
私はケの日に一汁一菜を取り入れてほしいと考えています。
一汁一菜は栄養バランス以外にも優れた食事なのです。
まずは、調理が簡単なので丁寧に料理を作ることができます。
食材は切り方や火の通し方で味わいが大きく変わるのです。
そのときの食材や食べる人の調子に心をよせて調理ができます。
次に、よく噛むことで食事に時間をかけ、ゆっくりと味わえます。
料理は咀嚼するたびに、形状・味・香りが刻々と変化するのです。
せわしない日々で食事だけに集中し変化を楽しむのは贅沢でさえあるかもしれません。
そして、食費を限定した食材に集中できるので質を高められます。
お米屋さんで精米されたお米、時間をかけて熟成された味噌、鮮度のいい肉や魚、野菜。
派手さはありませんが、心の底からホッとできる優しく力強い味わいです。
ハレばかりが楽しそうに見えますが、ケにはハレと違った幸福感があります。
ホッとする、安心できる、やすらぐ、癒される、リラックスできるといった気持ちです。
心と体の健康を感じられ、体調がいい、気分がいい状態で、疲れや渇きを癒し、次への活力を与えてくれます。
一方、ハレの食事はざっくりいうとおかずが多い食事です。
お祝いや集まり、外食や旅行での食事をイメージするといいかもしれません。
普段は食べない食材や手間がかかる料理、彩り豊かでたくさんのお皿が並びます。
ハレの日の幸福感は「やったー!」と手を挙げたくなるような高揚感が伴います。
ワクワク、興奮する喜びや楽しさです。
この種類の幸せはお金や労力、時間の対価として得られます。
そう、いつもハレばかりではお金がかかり経済的に負担が大きくなるのです。
また、自炊をするにしても献立を考える、大量の買い出しをする、多くの品数を作るのは作り手の精神的、体力的負担が大きくなります。
品数を多く、みんなが喜ぶように手間をかけて、と現代の食卓は毎日がハレの状態になっている家庭も多いのかなと感じています。
しかし、ハレばかりでは暮らしも、心も、体もバランスを崩し、破綻しかねません。
お米生活であれば、日常を取り戻し、いい循環を作ることができます。
そうはいっても「家族が文句を言う」「子どもの栄養が心配」などお悩みもありますよね。
食事はとても私的なことなので、それぞれの食卓に合わせた調整が必要です。
お米生活が気になったらぜひ一度、ご相談ください。
あなたの暮らしにちょうどいい食事の仕方を一緒にお探しします。