管理栄養士の小原水月です。
アメリカにお住いの読者の方からご質問をいただきました。
息子の離乳食を進める上で栄養について学んでいくうち、日本食がとても優れていることに気付きました。ただ、アメリカでは無機ヒ素の脳への影響を考え乳幼児にお米やお米製品は積極的に与えないように、大人も毎日食べないようにと指導されます。
(中略)
お米を食べることのメリットがデメリットより上回るのであれば息子にも積極的に取り入れてやりたいと思っています。
今回は、ヒ素がどんな物質で、食品中のヒ素に対しての日本や海外の対応、私の考えをお伝えします。
ヒ素とは
ヒ素は空気や土壌、水の中など地球上に広く存在し、飲み水や食べ物などにも含まれています。
また、ヒ素は火力発電や廃棄物処理など産業活動でも環境中に排出されています。
つまり私たちは、日常的に呼吸や食事を通じて、ヒ素を口から摂取しているということです。
ヒ素は一度に、または短期間もしくは継続的に大量に摂取した場合には、発熱や下痢、おう吐の健康被害から、最悪の場合死に至ります。
ヒ素に対する各国の対応
日本を含め世界180か国が加盟するコーデックス委員会やEU、中国、オーストラリア、ニュージーランドではヒ素の摂取基準と、飲料水や食品ごとの上限値を設定しています。
また、スウェーデンでは6歳未満の乳幼児にコメやコメ製品を与えないよう勧告し、6歳以上の子どもや大人も毎日食べるべきでないとしています。
こうした規制を設ける中でも、「バランスの取れた食事の一部として食べるならコメ食も可」としている点は各国で共通しています。
株式会社メディカルトリビューン「あなたの健康百科」「乳児はコメ控えて」…ヒ素懸念で米当局―欧州に続き
日本におけるヒ素
いっぽう、日本の内閣府食品安全委員会は「海産物中には多くのヒ素化合物が含まれている」「農産物の中ではコメからの摂取が比較的多い傾向にある」と評価しながら「日本人が食品を通じて摂取するヒ素の現状に問題があるとは考えていない」としています。
ただし、「一部の集団で多く無機ヒ素を摂取している可能性があることから、特定の食品に偏らずバランスのよい食生活を心がけることが重要」とも注意喚起し、食品に含まれるヒ素の実態調査を実施・公表しています。
参考:農林水産省「食品中のヒ素に関する情報」食品中のヒ素に関するQ&A
社会におけるヒ素
ここまでをまとめます。
・ヒ素は自然界に存在する物質で、人は飲食物を通して日常的に摂取している
・ヒ素は大量に摂取すると健康被害を起こす可能性がある
・摂取基準を設けている国もある
・日本では食品を通じて摂取するヒ素の現状に問題ないとしている
エビデンス(科学的根拠)だけでいいのか
ここからは私の個人的な見解をお伝えします。
ヒ素に限らず添加物など口にする物質に関してさまざまな基準がありますが、マウスなどの実験動物を使用して得られたデータを人に当てはめて算出されたものがほとんどです。
単体の物質の有用性やリスクは研究がしやすいのですが、複数の物質を同時に摂った際にどういう反応が起こるかは、調べ尽くすのは不可能でしょう。
また、人の体の機能は住み続けている環境に影響を受け、個体差は大きくなります。
個人の体の機能や生活習慣によって、同じものを同じ量食べても違う反応が起こることもあるのです。
また、日本人は乳製品の消化が苦手だったり、ヨーロッパに住む人は海藻の消化が苦手だったりというは、その土地で長く食べ続けてきたものに体は順応していくという、ひとつの証でもあります。
健やかさは自分で作ると決める
健康増進よりも、疾病の早期発見や予防が優先されるやすいので、不安をあおるような情報が多くなりやすい現実があります。
しかし、行政はさまざまな情報提供、注意喚起はしてくれますが、個人の健康や寿命の責任を負ってはくれません。
もちろん、医療も同じです。
最終的には自分の、家族の健康は自分たちで判断し、受け入れるしかないのです。
うまくいっている人を参考にする
そこで、私がいつも大切にしているのは、エビデンスだけを重視するのではなく、日本人がずっと食べ続けてきた食事をベースにすること。
たとえば、日本では弥生時代から稲作が始まり、約1300年前の奈良時代には米が一般的な主食になったと考えられています。
豊臣秀吉が兵に1日5合のお米を配給していたとか、富山のお百姓さんは1日に1升のお米を食べていたとか、日本人がお米をたくさん食べていたという逸話は少なくありません。
それでいて、今まで日本では、食品を通じて摂取したヒ素による明らかな健康影響は認められていないのです。
そして、戦後日本人の死因5位までにヒ素中毒が入ったことはありません。
現在でも世界的にみて日本人の寿命の長さはトップクラスです。
中庸の視点を持つ
多くの物事にはネガティブな面だけでなく、ポジティブな面もあり、両面から判断ができると、穏やかに食事と向き合えるとおもいます。
「これってどうなのかな」と迷ったときには、反対意見の発信も同じくらい集めて、判断してみてはいかがでしょうか。
余談ですが、私の離乳食は重湯から始まり、今では毎日2合以上のお米を食べていて、これからも食べ続けていきます。
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